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管理人の独り言や、拍手やメールで頂いたコメントへの返信です。
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こちらはsalty★moon-sugarの管理人であるしおさとが、独り言やら拍手コメント等の御礼などを保管している場所です。
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ヒヤヒヤしました…


昨日、Wi-Fiルーターがうんともすんとも言わなくなりまして、
PCをネットにつなげられず、ぎゃああああ!となっておりました。

無事に復活できましたが…本当に怖かったです(>_<。)


ところで、返信不要との事でしたが、

05月18日に拍手コメントを下さった方、
本当に本当にありがとうございました!!<(_ _)>

私のサイトはとても!とても!とても!!幸運な事に、
閲覧して下さる方々がとても優しい方々ばかりのようでして!

ちょいちょい更新します詐欺をしているにも関わらず、
今回のように温かいお言葉をかけて下さったり、
心配して下さったり…と、本当に嬉しい事ばかり起こります!

最近ついったーの方にばかり顏を出しておりますが、
「あぁ…ストレスたまってるのかな…」とか、
「萌えをチャージしてる途中なのかな」と思って頂ければ、
嬉しく思います!!


活動報告がてら…になりますが、

取扱いCPが違う関係で、
サイトにも支部にも載せる予定はないのですが、

前々から書いてみたいと思っていた話を書きましたので、
せっかくなので、こちらにも投下しておきます。


まいそろ3設定で、ふれん×るーくです!


※ちょっぴり死ネタありますので、苦手な方はご注意下さいね!
※序盤の会話は、まいそろ3のスキットと全く同じです!













王子と騎士と模型


いつもと変わらない平穏な朝だと思った後に、平穏だからと言って簡単に気を緩めてはいけないと自分を戒めた時の事だった。
廊下の先に、鮮やかな朱から金に変わる不思議な色合いの髪を翻す少年が現れたのは。
すぐにライマ国の第一王位継承者であるルーク・フォン・ファブレだと分かり、フレン・シーフォは廊下の端に寄ると、背を正して道を開けた。身分の上下も種族の違いも関係ないアドリビトムにおいても、騎士団生活で身に染み付いたフレンの癖は抜ける事がないのだ。
「おはようございます、ルーク様」
挨拶をすれば、ルークは「ん?」とほんの少し視線を向けただけで「あ~、はいはい」と応えながら、フレンの前を通り過ぎて行った。
フレンは僅かに驚きながら顔を上げ、ルークの背を視線で追いかける。そして、難しい方だと聞いていたけれど、一介の騎士の挨拶に応えてくれるなんて、ルーク様は案外気さくな方なんだな…などと考えた。
階級差別のあるガルバンゾでは、下町出身の騎士に声をかけてくれる貴族などほんの一握り。自分と話したいなどと言うエステリーゼ姫は例外中の例外で、挨拶しても視線さえ向けられない事などざらにあった。
ルークの背を眺めながら、そんな事を思い出していると、ひらひらと揺れていた朱が急にぴたりと止まり、次の瞬間に、くるりと振り返ったルークが翡翠色の瞳を向けてくる。
「おい、お前!」
「はい!何でしょうか?」
反射的に返事をして、何か失礼な事をしてしまったのだろうかと内心で不安になっていると、
「えーと、名前なんつったっけ……?」
ルークがいきなり名前を聞いてきた。
これはマズイ事になってしまった。エステリーゼ様にご迷惑が及ぶような事にならなければ良いのだけれど…などと考えながら、内心で緊張しつつ「はい、ガルバンゾ国騎士団隊長フレン・シーフォと申します」と応えたのだが、
「フレン……。フレンな、よし覚えた」
その口調は柔らかく、どう見てもルークは怒っている訳ではなさそうだった。
「なぁ、フレン、ちょっと頼みがあるんだ。聞いてくれるか?」
頼み?と疑問に思いつつも、拒否という選択肢が最初から頭にないフレンは「はい、私でお力になれる事でしたら」と即座に応える。すると、
「したらさ、ちょっと暇潰しに模型でも買ってきてくれよ」
意外な言葉が返ってきて、フレンは思わず目を丸くしてしまった。
「も、模型ですか?」
「そーだよ!模型だよ、も・け・い!!こ~んなクソ狭い船の中にいて他にやる事ねーっての」
買うと言っても、ここは空を飛ぶバンエルティア号の船内。武具や回復アイテム、食材などを売る店はあるのだが、模型までは取り扱っていない。貴族の頼みならば拒否権はないのだが、売っていない物を買う事は出来ない。
「で、ですが、船内にはその様な売り物は……」
「だー、うるせぇっての!俺は今、暇なんだよ、ヒ・マ!!」
ルークは子どものように怒って手を振り回すと「わかったら、さっさと買って来いよ。じゃーな!!」とだけ言って、朱色の髪をひらひら揺らしながら行ってしまった。
「………」
どうしたものかと考えながら、フレンは顎に手を当てる。こうなったら、アンジュとチャットに話して、ここから一番近い町で降ろしてもらい、模型を買いに行くしかないだろうな…などと考えていると、
「あ、フレン!どうしたんです、真剣な顔をして?」
そんな明るい声が聞こえてきて咄嗟にフレンは顔を上げ、
「あ……、エステリーゼ様!おはようございます」
エステルにつられて柔らかい笑顔を取り戻した。
「何でもありませんので、大丈夫です」
「そうなんです?」
首を傾げるエステルを見て、エステリーゼ様を心配させてはいけないな…とフレンは表情を引き締めた。よくよく考えてみれば、ルークの頼み事というのも、模型を買ってくるだけの簡単な御遣いだ。さっそくアンジュの所に行って話をつけにいかなければ…と考えた時、
「でしたら、フレン、少しお話しませんか?わたし、昨日、面白い夢を見たんです。うふふ」
無垢な笑顔で楽しそうにするエステルを前にして、フレンは焦ってしまう。…が、そんなフレンの様子に気付かず、エステルは昨日見たという『面白い夢』の内容を話し始めてしまった。しかも、どうやら大長編らしく、なかなか終わらない。どうしようかと困っていると、
「おい、フレン!まだかよ、さっさとしろよ!!」
廊下の向こうから顔を出したルークが催促してきて、
「は、はい!もう少々お待ち下さい!!」
と反射的に答えたのだが、
「それで、その時とっても面白い事が起きたんです」
エスエルの夢の話は、今ようやく最高に盛り上がるシーンに差し掛かったようだ。
「何と、フレンがユーリの服を間違えて着て……」というエステルの話に、
「フレーン!!」というルークの催促する声が被ってくる。
「は、はぃ……。あ、あぁ……」
僕は一体どうすれば良いんだ!?と叫び出したかったが、そんな訳にもいかない。そして、そんな慌てるフレンの姿を遠くから眺めて「はは、相変わらずお盛んだな、フレンは」なんて暢気に呟く親友の姿にも、気付く事さえ出来なかった。


それから1時間後、フレンはルークの部屋の前に来ていた。
あの後、ようやくエステルの話から解放されたフレンは、アンジュとチャットに事情を説明し、一番近い町の港で船から降ろしてもらうと、住民に模型店の場所を聞き出して向かい、ルークが気に入りそうな模型…はどれなのか分からなかったので、とりあえず店主が勧める『陸上装甲艦タルタロス/塗装済み』の模型を購入して、停泊していた船へと戻って来たのだ。
1時間でよくやったと自分を誉めたい所だが、1時間もルーク様をお待たせしてしまったと考えてしまい、部屋の扉をノックする勇気がなかなか出ない。そもそも、1時間も待たせてしまったのだから、ルークはフレンの事などすっかり忘れて、他の仲間と一緒にどこかで遊んでいるかもしれないのだ。
それでも、貴族の我儘に振り回されたというより、子どもの我儘に振り回されたと思えるせいなのか、不思議と苦笑しか出てこない。下町で過ごした子ども時代は大変な事も多かったが、ユーリや周りの子どもと一緒に遊んだ楽しい思い出も多かった…などと思い出しながら、子ども時代には店先に並んだ姿を眺める事しか出来なかった高価な模型に視線を移した。
結果はどうであれ、模型を届けなければ。そんな風に考えて、フレンは扉をノックする。
「フレンです。頼まれた物をお届けに上がりました。ルーク様はこちらにいらっしゃいますでしょうか?」
すると、
「おー、入っていいぞ」
意外にも、室内からルーク本人の声で返事が返ってきた。
僅かに驚きながらも「失礼いたします」と言って扉を開ければ、ベッドの上に寝転んでいたルークがちょうど起き上がった所らしく、寝癖のついてしまった髪をくしゃくしゃと掻き混ぜながら頭を掻いていた。
「大変お待たせしました。遅くなりましたが、模型をお届けに上がりました。ルーク様のお好みが分かりませんでしたので、店主の勧めるものを手に入れましたが…」
と話し始めたのだが、ルークが普段と違って目を大きく開けている姿を認め、フレンは思わず言葉を詰まらせる。
「…あ、あの、ルーク様、私は何か至らない事でも…」
何かマズい事をしてしまっただろうかと心配になりながら聞いてみると、
「お前、本当に買ってきたのかよ…?」
いかにも呆然といった様子で、ルークが呟くように言う。
「えっ?」とフレンは思わず声を上げた後、慌てて取り繕うように「もしかして、模型を買って来いというのはご冗談だったのですか?」と聞き返した。
「いや、冗談じゃねぇけど、でも、なんで俺の言ったこと…」とルークはもごもご言いかけたが、きっと目を吊り上げて胸を張ると「じゃあ、買って来たんなら、さっさと作れよな!」と声を張り上げる。
「えっ?」とまたフレンは驚いてしまい、今度は取り繕う事が出来ずに目を丸くしながら「ルーク様はお作りにならないのですか?」と聞き返してしまっていた。普段のフレンならば、今の自分の言葉は王族に対して不敬に当たるかもしれない…と考えている所だろうが、驚きの余り思考が追い付かない。
「はぁ!?何言ってんだ!?第一王位継承者の俺に、そんな事させる気なのか!?模型作ってる途中で俺が指でも怪我したりしたら、お前なんかすぐ牢屋行きだぞ!!」
「えぇっ?!」
牢屋行きかどうかはともかく、他国の王族に怪我をさせたとあっては重大な責任問題になるだろう。しかし、模型は組み立てる所から…というより、組み立ても楽しみの一つではないのだろうか?などと驚きながら疑問に思っていたのだが、
「ほら、さっさとこっちに来い!」と言ってルークがばんばんと自分のベッドを叩くので、「えっ?ルーク様のベッドの上ですか?」と更に驚いて聞き返してしまった。
「俺に床に座れっていうか!?」と怒鳴り返され、よく分からないながらもベッドに向かい、模型の入った箱をシーツの上に置いた。「早く作れよな!」と言ってごろんと寝転がるルークを見て、自分が作らなければいけないと、いよいよフレンは覚悟を決める。
「畏まりました。すぐに工具を持ってまいりますので、少々お待ち下さい」
「おぅ、仕方ねぇから、待っててやってもいいぞ」
ルークの返事を聞いてからフレンは一礼して部屋を出ると、
工具を借りに行くついでに、本格的に取り掛かる為にも装備を解いて来ようと考えた。


装備を解いて剣だけは腰に差し、チャットから借りた工具を持ってルークの部屋に戻ると、何故か再びルークは僅かに驚きながら「似てるのは見た目だけだと思ってたけど、お前も模型作るの好きだったのか…」などと、訳の分からない事をまるで感心するように呟かれた。
特に好きという訳ではありませんし、作れと命令したのはルーク様の方でしょう…などと言いたくなったのだが、「子どもの頃に一度作った事がある程度ですが、尽力いたします」と応えれば、「じゃあ、さっさと作れ」と言われて、またベッドの上に座るよう促された。
「いえ、私は床で構いませんので」とやんわり断っても、ルークに「俺は床になんか座りたくねぇんだよ。ソファだと模型作るには狭いしな」と言われて困ってしまう。自分が床に座るだけであって、何もルークにまで床に座れと言った訳ではないのに…と釈然としなかったが、ライマの護衛の方々に見つかった時は覚悟を決めよう…などと腹を括ったフレンは「では、失礼いたします」と開き直って、工具箱をベッド脇に置くと、自分はベッドの上に乗り上げた。
そうして模型を作り始めた最初の頃は、
「なぁ、このパーツ、どこに填めるんだ?これに合わせるのか?」
「これ主砲の砲身だろ?そうだよな?ここに付けるんだよな?」
「最初は手際悪ぃと思ったけど、案外器用だな、お前…」
「そっちから組み立てるのか?こっちは後にするのか?」
「お前、几帳面だなぁ…。そんなのテキトーでいいのに…」
などとルークは自分で組立てないくせに余計な口出しばかりしてきたのだが、ふと静かになった事に気付いてフレンが見てみると、隣で寝転がっていたルークはいつのまにか眠ってしまっていた。
「まさか僕の組立てが遅いせいで、呆れて眠ってしまわれたのだろうか…」
最初は慣れない作業という事もあって、かなり手間取ってしまったのだが、途中からは自分でも上手くなったと思えるくらいにスムーズに進んでいた筈だった。店主おススメの『陸上装甲艦タルタロス』ではなく、もっとパーツの少なそうな『レアバード』にしておけば良かった…などと後悔しても後の祭り。
「……きっとルーク様は飽きてしまわれたんだな…」
はぁ…と溜息をついた所で、ふとフレンは疑問に思う。
そもそもルークは『暇潰し』の為に模型を買って来いと言っていたというのに、自分では作らず横から口出しするだけだった。しかも、どうやらルークは最初から自分で作る気などなかったらしく、当たり前のように作れと言ってきたのだ。
その事を念頭に入れて考え直してみると、ルークにとっての『暇潰し』とは『模型作りを口出ししながら横から眺める事』になってしまう。
「……横から眺めるだけで、暇潰しになるんだろうか?」
自分で作った方が楽しいと思うのだけれど…などと考えながら、完成間近の『陸上装甲艦タルタロス』の模型を眺める。ルークが眠ってしまった事に気付かなかったほど、途中から模型作りに夢中になってしまっていたフレンは、大人として恥ずかしいと思う反面、自分の中に眠っていた童心を思い出して懐かしいような気持ちさえ感じていた。
「…っと、そんな事を考える前に、早く完成させないと」
暇潰しになったかどうかは分からないけれど、完成した時にルーク様が喜んでくれれば良いな。
そんな事を考えて気を引き締め直すが、
「…あれ?」
肝心なパーツが見当たらない。
ルークが『主砲の砲身』と言って瞳をキラキラさせて眺めていた重要なパーツだというのに、一体どこにやってしまったのだろうかと周囲を見回してみると、
「あぁ…」
子どものように小さく身体を丸めて眠っているルークが、大事そうに握り締めていた。
目を吊り上げて命令していた時とは違って、まだ幼さの残る無垢な寝顔を晒すルークを見て、フレンは思わず笑みを溢す。起こしてしまうのは可哀想だと思えるくらい気持ちよさそうに眠っているようだったが、パーツを渡してもらわなければ模型は完成しない。
「…そうだ」
あと1つ2つ組み合わせれば、模型は完成する。眠っている間に完成しているよりも、最後のパーツを自分で組み合わせて完成させる瞬間を味わう方が、きっとルーク様も楽しい筈だ…とフレンはまるで良いアイディアが閃いたとばかりに考えて、ルークの傍に顔を寄せた。
「ルーク様、…ルーク様、どうかお目覚め下さい」
「んん…?」
ぼんやりと目を開けたルークは怠そうに身体を起こして、目をこすると、
「…完成したのか?」
と聞いてきた。
「いいえ、まだですが、今ルーク様がその手にお持ちのパーツを合わせて、ここに組み合わせれば完成です。せっかくですから、ルーク様の手で完成させてみませんか?」
きっとルーク様は子どものように瞳を輝かせて喜ばれるに違いない…と期待したのだが、
「え…っ」
何故かルークはさっと顔を青褪めさせると、まるで怯えるように狭いベッドの上で僅かに身を退く。
「ル、ルーク様…?」
何かマズイ事を言ってしまったのだと分かり、フレンは慌ててルークの表情を伺おうとしたのだが、俯いてしまった顔は、長い前髪に隠れてしまっていて見えなくなっていた。
「あの…、ルーク様、私は何かルーク様に失礼な事を…」
と聞きかけた時、
「……俺が怪我したりしたら、お前なんか牢屋行きだって、言っただろ…」
小さく呟くような声が返ってくる。
何故か身を縮ませるルークを見て、フレンは咄嗟に励まそうと「そんなに怯えなくとも大丈夫ですよ。ルーク様に怪我などさせないよう私が注意しますから」と言ったのだが、ルークは柔らかな朱色の髪をふるふると揺らしながら首を横に振ると、
「前に、そう言ったヤツがいたけど、俺、馬鹿だから、指を切っちまった…」
弱々しい声で小さく応えた。
剣術を嗜まれるというのに指先を怪我してしまう事が怖いのだろうか?と思って首を傾げた時、
「…ずっと前に内緒で、護衛の白光騎士にさ、模型作りを手伝ってくれって頼んだんだ。怪我させては大変だからって言われたのに、どうしても自分で作りたくって…我儘言って手を出したら、指先を切っちまって…」
ルークはぽつぽつと呟くように、顔を上げないまま話し始める。
きゅっと握り締めた左手を右手で包み込み、身体に寄せて背を小さく丸めるルークの姿は、まるで本当に痛みを堪えているかのように見えて、フレンには痛々しく感じられた。
「小さな…本当に小さな切り傷だったのに、俺びっくりしちまって痛いって泣き喚いちまったからさ、その騎士、牢屋に入れられちまって…。あいつ…すげぇ優しくってさ、他のヤツらみたいに俺のこと無視しないでくれたヤツだったのに…」
それで『牢屋行き』だと殊更に主張したのだと納得した瞬間、フレンはルークの解り難い優しさに気付かされた。ルークは自身が怪我する事に怯えていたのでなく、ルークが怪我する事で周囲に及ぶ影響を恐れていたのだ。
フレンが万が一牢屋に入れられても自分は大丈夫だと言いかけた時、
「俺がさ、牢屋から出してくれって頼んだら、その騎士、すぐに出してもらえたんだ。…けど、白光騎士団からは外されて、紛争の多い地域の国境警備に回されて…」
ルークはきゅっと手を握り締める。
「…そこで、死んじまった、って。貴族出身のエリートだったのに、俺のせいで犬死した、って…。馬鹿な俺の我儘のせいで、可哀想な事になったって、メイドが話してた…。俺が何もしなければ、あいつ、死なずに済んだのに…」
小さく震える肩を目にして、思わずフレンは手をのばした。
しかし、ルークに触れる手前で、理性がブレーキをかける。
自分が触れても良いのだろうかと、迷う。
ルークはライマ国の第一王位継承者で、自分は他国しかも一介の騎士隊長に過ぎないのだ。
「……お前、もうどっか行けよ…」
「え…?」
顔を上げたルークは涙で滲んだ目を吊り上げると、大事そうに握り締めていたパーツを放り投げ、
「どっか行けって言ったんだよ!模型作りなんかもういい!!俺は飽きたんだよ!!」
喚くなり背を向けて、膝を抱えて身体を丸めてしまう。
その小さな背中を見つめて、人と関わる事に臆病になってしまっているルークを独りにしてはいけないと強く思い、フレンは使命感に似た感情が己の中に存在する事をはっきりと自覚する。同年代の少年が多く所属するギルドの中で、ルークが暇を持て余しているのは、人との関わりを恐れるルークが未だ誰にも馴染めず孤立しているせいなのだ。
フレンは完成間近の模型を見つめた後、投げ出されたパーツを拾い上げる。
「その騎士の事は、残念だったと思います。当時その騎士がどんな事を思ったのか、今はもう想像する事しか出来ませんが、少なくとも僕は、模型作りをしていて楽しいと思いましたよ」
パチンとパーツを填めて組み合わせれば、あとは本体に組み込むだけで完成となった。
「それに、もしも完成したら、楽しいだけでなく、とても嬉しくなると思います」
「……何言って…」
「それがルーク様と一緒に完成させたものなら、その嬉しさは何倍にも大きくなると思うんです。それに、その嬉しさはきっと、ルーク様も同じように感じて頂けると思うんです」
恐る恐る振り返るルークに、フレンはにこりと微笑みかける。
「ですから、一緒に完成させてみませんか?」
最後のパーツを差し出せば、ルークはそれをじっと見つめたまま動かなくなった。
瞳に迷いがあるのは、見れば分かった。
ルークの恐怖は、その胸に秘められた優しさに由来している。それが分かった今となっては、この方はどれほど繊細で優しい方なのだろうかと考えれば考える程に、フレンは切なくなった。
そして、守りたいと思った。
ライマの第一王位継承者ではなく、人と関わる事に臆病になっている一人の少年を。
「万が一ルーク様がお怪我をされるような事があれば、僕がすぐに治癒術で治療致します。もしも誰かがルーク様を非難するような事があれば、僕がすぐさま駆け付けて盾となり剣となり、全力でお守り致します」
フレンはそっとルークの手を取って、最後のパーツをその掌の上に乗せる。
「ですから、どうか恐れず、このフレン・シーフォをご信用下さい」
両手で白いルークの左手を包み込み、きゅっと握り締めれば、ルークはまだ迷いは残っているものの光を取り戻した翡翠色の瞳を、フレンに向けてきた。そして、一瞬だけ真剣な眼差しを交わらせた後、ルークはぷっと噴き出して笑い始める。
「はははっ!何言ってんだよ!ガルバンゾ国の騎士なら、エステル守るのが役目だろ!」
フレンはガルバンゾ国の騎士としてではなく、ただのフレンとしてルークを守りたいと言ったつもりだったのだが、どうやらルークには伝わっていなかったらしい。慌てて弁解しようとしたのだが、
「まぁ、何でもいいや。これくっつければ完成なんだよな?ほら、それ貸せよ」
「あ、はい!」
悲しくも騎士の習性なのか、弁解よりも先に、反射的に返事をして模型を手渡した。
パチンと小さな音を立てながら最後のパーツを填めこんだルークは、
「へへっ、完成、だな!」
完成した模型を高く掲げて、太陽のようにきらきらと輝く瞳で見つめる。
その姿を見て、フレンも心の中で「まぁ、いいか」と呟いた。

目の前に笑顔を輝かせるルークがいる。
何よりもそれが一番大事なのだと、フレンは思う事にした。

そうして芽吹いた新たな感情に2人が気付くのは、もう少しだけ先のこと。





おわり。



以上です!ありがとうございました!!




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